麻薬・覚せい剤などの乱用が問題になってきている。
酒井法子(現時点では容疑者)の逮捕など、まさかと思うような人にまで汚染が広がっている状況である。
こられは「知らなければいい」というだけでは身を守れない。
どのようなものかを知り、どのような害があるかも知ることで、近付くことも近付けることもないようにできるのである。
映画「天空の城 ラピュタ」のセリフにこういうものがある。
「いいまじないに力を与えるには、悪い言葉も知らなければいけないって。でも決して使うなって・・・」
まじないではないが、麻薬や覚せい剤という悪いものも知っておくべきなのだ。
決して使わないために、である。
実際、映画やドラマなどで名前は聴くし、少しは知っているつもりだったのだが、今回調べてみると、やはりアバウトな知識というのは役に立たないものだと思った。
まずは、麻薬と覚せい剤の違いついて見てみよう。
麻薬と覚せい剤
脳は電気信号と化学物質(電気信号も化学物質で作り出す訳だが)で動いている。
脳や神経はホルモンや神経伝達物質の作用で、信号を伝え、興奮したり鎮静化したりするのである。
その中には心地よさを感じるもの、爽快さを感じさせるもの、興奮を感じさせるものなど色々とあるが、それらは状況によって脳内で作り出される物質であり、行動を取らせるために必要なものばかりである。
脳内で作り出されるこういった物質を「脳内麻薬」という。
例えば狩りに出て獲物を仕留めるのは生きるために必要不可欠だった時代もあっただろう。
普段より力が出たり俊敏であれば仕留める確率は高まるし、そういう事態にあっては多少の痛みなどでひるんではいられない。
逆に言えば、そういう能力を持った人が生き残ったと言える。
狩りに力を発揮し、戦闘時に多少の痛みは感じないという人間。
そいういう者が勝ち、食糧を得て生き残ったのである。
ドーパミンやベータ・エンドルフィンというのを聴いたことがあると思うが、それが脳内麻薬と言われるものだ。
ドーパミンは爽快感を得るもので、狩りが成功した際などに大量に分泌されただろう。
エンドルフィンはモルヒネの6.5倍の鎮痛作用があり、痛みを感じなくなる。
そういった作用を脳は持っているのである。
例えば性行為も快楽物質を分泌させるため、それに溺れる人も出てくることになる。
また、別の物質を摂取することで、これらを疑似的に得ることも為されるようになった。
それが麻薬や覚せい剤である。
麻薬は神経の抑制を、覚せい剤は興奮を起こすものだ。
実は、脳内麻薬もこれらのドラッグも一時的にしか効かない。
すると脳は更に欲しくなり常習するようになるのである。
問題はそれだけではない。
もうひとつの脳の働きに、一方へ傾いた状態を正常に戻そうとする働きがあるのである。
興奮していたら鎮静化しようと、逆側の物質が分泌されるのだ。
それは不快なことであり、疲れを感じさせる。
興奮した後にどっと疲れが出るのはそのためである。
ドラッグの種類
教科書にも載っているのは「あへん」である。
アヘン戦争を説明するのにあへんというものを知らなくてはならない。
とはいえ筆者も「けし」から作られるくらいしか知らなかった。
医療的に必須である「モルヒネ」はあへんの含有物を抽出したものである。
また、モルヒネから合成されるものに「ヘロイン」がある。
脳には異物を入れないという関門があり、そのためモルヒネは摂取量の2%しか脳内に到達しないのだが、ヘロインは油溶性であるため65%もが通過し、脳内で分解されモルヒネとなり作用する。
夢の新薬だったのだろうが、禁止薬物となってしまった。
「コカイン」はコカの葉からの抽出物である。某コーラの名前はこれが元であり、元々はコカイン摂取のためのものであった(ヘロイン中毒を治すためらしい)。
覚せい剤は「麻黄(まおう)」からの抽出物から化学合成されたものである。
「合成麻薬」は化学物質の合成のみで造られたドラッグである。
「大麻」はアサの一種で、葉を乾燥させたものが「マリファナ」、樹脂や芽を固めたものが「ハシッシュ」、成分のみを抽出したものが「ハシッシュオイル」である。
実際は「たばこ」もこれらドラッグの仲間であり、脳への作用や常習性などもまったく同じなのだが、現時点では禁止薬物となっていない。
とはいえ、たばこでは幻覚などはないが、他のドラッグにはあるという違いはあるかもしれない。
常習性・禁断症状などは同じと言っていいだろう。
一説には「たばこ」より「大麻」の方が害が少ないという。
ただし、法律で禁止されたものと認められているものなので、違反してはいけない。
なお、戦時中(戦後もしばらくは)「ヒロポン」という覚せい剤が一般的に使われ、薬局で簡単に買うことができた。
凄い時代である。
「覚せい剤でも打たなきゃやってられるか」だったのだろうか。
なお、法的には「あへん法」「大麻取締法」「覚せい剤取締法」「麻薬及び向精神薬取締法」(旧名 麻薬取締法)の薬物4法と「麻薬特例法」(正式名 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)の5つがある。
このため、あへんや大麻を麻薬・覚せい剤と分ける場合もあるが、ドラッグであることは同じであるためここでは区別せず掲載した。
酒井法子容疑者の大罪
日本での覚せい剤所持・使用は微罪とさえ言える軽さである。
国によっては死刑までありうるのだが、日本では初犯なら執行猶予が付いて終わる。
それでも社会的制裁は受けるのだが、酒井容疑者の罪はそれだけではないのである。
6日間逃げた。
その間に体内の覚せい剤は放出され、尿検査では検出されなくなる。
現に、酒井容疑者からも検出されず、このままでは不起訴もありうるという報道もあるくらいである。
法の観点から見てみよう。
犯行がありその証拠を隠滅させたり、容疑者に有利な供述をするのは当然とされている。
それを前提に法があると言ってもいいだろう。
弁護士は被告人利益を守るためにいる。
だから「逃げ得」ということも出てくるのである。
良いことではないし、法はそれを認めないのだが、証拠がなければ裁けないのも事実なのだ。
このため、職質・任意同行となると、逃げる者が激増することが予想される。
「後で必ず出頭します」の「後」というのが「1週間後」でも嘘ではないのだから。
これは捜査機関に大迷惑に違いない。
別の法整備を急がないと、どんどん逃げる者が出て大変なことになる予感がする。
これは法で裁かれる罪ではないが、酒井容疑者は社会的な大罪を犯したと言っていいだろう。
もちろん、マスコミもそれに加担して宣伝しているので、共同正犯なのだが。